最近のマンホール蓋事情 1

 今日はちょっと趣向を変えて表題の通り、最近のマンホール事情をお届け。

 

 「公益財団法人 日本下水道協会」というところが発行している「下水道協会誌」という業界雑誌があります。

www.jswa.jp

 実は仕事でこういう業界に関わっているということもあるのですが、先月号は個人的にもとても興味のある最近のマンホール(特に蓋)の活用事例や各国のマンホール蓋事情がチラッと紹介されていました。

 

 誌面の内容がWebにもアップされていればリンクを張って終わりなのですが、残念ながら目次しか掲載されておらず、著作権の関係もありそうですので、個人的な忘備録としてもまとめておこうと思います。

 

 先月号はマンホール特集ということもあり、幾つかの事例が紹介されていましたので、1つずつまとめて行こうかと思います。

 

 まずはフリーアナウンサーの山本ミッシェルさんによる巻頭言から。

ameblo.jp

 

  NHK国際放送局で「Science View」という日本の最先端技術を紹介する番組(HPをチラッと調べてみると日本語の番組では出てこないので英語、もしくは日本語以外の言語での番組のようです)があるようなのですが、山本さんはこちらで長年取材を続けらているようです。

www3.nhk.or.jp

 

 番組の中では下水道工事技術や日本のマンホール蓋なども幾度か紹介されてこられたそうで、その度に各国から大きな反響があるそうです。

 

 ちなみに山本さん、ブログにもスマホの待受をマンホールにしたことを報告させていたり、今はまだそのマンホール蓋を待ち受けにした記事1件のみですが、「マンホール」というカテゴリを作られたりしていて、「マンホーラー」の片鱗が窺い知れます。

ameblo.jp

 

 さてさて、私は全く知らなかったのですが、海外では今輸入したマンホール蓋を使う国が増えているそうなのです。

 

 New YorkのManhattan地区のマンホール蓋の多くには「Made in India」と書かれているらしく、それに気づいた映画監督のNatasha Rahejaという方が蓋が作られているインドのHowrahという都市(Kolkataの隣接都市のようです)の工場まで追跡取材をし、「Cast in India」といドキュメンタリー映画を作成したそうです。 

 

www.google.co.jp

 

 映画の題名が「Cast in India」ということからも想像されるのです、現地でのマンホール蓋の制作状況は過酷らしく、上半身裸、そして裸足で高温の鋳物であるマンホール蓋が制作されているとのことです。

 

 日本語での情報はあまり見つけられなかったので、日本語訳はされていないのかも知れません。

www.amazon.in

 

 こちらで同作の予告編と思われる動画を見つけました。 

www.youtube.com

 

 私自身、まだ日本でのマンホール蓋の制作風景も見たことはないのですが、鋳物製品の制作とは言え、予告編だけでこの光景はちょっと衝撃的なものがありました。

 

 アメリカやヨーロッパの多くの国ではいま「Made in India」、あるいは「Made in China」と書かれた輸入マンホールが増えているようで、その背景には輸入ものの方が20〜60%程も安価になるということがあるそうです。

 マンホール蓋のような重量物(日本の下水道の規格だと基本的に90kg/枚)を輸入してもなお安価になるような背景には労働力が安価な国で制作しているということに加えて、こうした安全面への配慮を欠いた制作状況もありそうです。

 

 一方で、こうした輸入マンホールの増加はもともとマンホール蓋を作っていた各国の地元の鋳物工場を厳しい状況に追い込んでいるという状況もあるそうです。

 

 日本で用いられている下水道用マンホール蓋は(おそらく通信や電気なども同様だと思われますが)今のところJIS規格をベースとした規格が定められていますので、こうした規格を満たしていることが確認できるような検査体制を整えない限りは輸入製品を用いるのは難しのではないかと思いますが、上記のようなインド、中国製品のマンホール蓋を欧米各国が用いているということについてはその辺の扱いをどうしているのかがとっても気になるところです。

jgma.gr.jp

 

 これは私も知らなかったのですが、山本さんの記事によれば、各地で時折見かける色付けされたデザインマンホール蓋、実はこうしたマンホール蓋の色付けは職人さんたちが1枚1枚色付けしているとのことです。

(山本さん、ここの見学については「仕事やプライベートで」と書かれているので、そうした方たちとお知り合いになる機会のあるお仕事とは言え、結構コアなマンホーラーですね。)

 

 山本さんはこの職人さんが色付けされている様子を見て、「街が一枚一枚丁寧な手仕事でカラフルに彩られている」というとても素敵な表現をされていました。

 そして、外国人観光客だけでなく、日本人の方にもそうした体験をしていただければ、違う景色が見えるようになり、インフラにも敏感になり、また、それらを大事にできるようになるのではないか、とも書かれていました。

 

 山本さんの夢は日本各地の街の姉妹都市とマンホール蓋を交換し、日本のデザイン・マンホールの蓋に世界ツアーをさせることだそうです。

 

 実際に、Londonの大英博物館には新潟県長岡市の土器をデザインしたマンホール蓋が贈呈され、展示されているそうです(火焔土器の常設展示の際に記念として贈呈されたようですね)。

kyodonewsprwire.jp

www.city.nagaoka.niigata.jp

 

 私自身もこの仕事についてから日本各地、果ては海外旅行に行ってもこれまでは気にもしなかった足元の世界にも目を向ける機会が増え、そういう意味では今の仕事について世界が広がったと感じる場面となっています。

 そして、そうした日本各地、世界のマンホール蓋を見比べていると、日本のマンホール蓋は各地の名産など、マンホール蓋がその街を紹介する一つのメディアになっていると感じます。

 時には職人さんたちが一枚一枚手作業で色付けまでされている。そのような製品は確かにマンホール蓋としてだけの機能で比較すれば前述のようなインドで制作されているような物からすればデザイン企画、新規鋳型の制作など、とてつもなく高価な物にも感じられますが、「メディア」としての機能も持ち合わせていると考えれば、それもありかな、と思います。

 

 思いの外、長めの記事になってしまいました、次回以降は実際に日本各地でマンホール蓋がどのように活用されているのかをお届けしたいと思います。